アメリカの母乳外来が教えてくれること〜復職に向けた母乳育児の推進
なかなか母乳外来の話に入れない、母乳育児の話の続きかくね。
この記事だけでも話がわかるように言葉を選んで書くつもりだけど、母乳育児シリーズを最初から読みたい人は先にこの2本の記事をどうぞ↓
この2本の記事を書きながら改めて頭の中を整理して考えたんだけど、 母乳育児を確立するために大事なポイントっていうのはたぶん3つに集約できる。
- 赤ちゃんに十分な水分と栄養を与えること
- おっぱいに産後すぐから刺激を与え続けて、母乳を出させること
- 哺乳瓶でミルクをあげるのは極力控えること
この3つの考え方は日米で共通なんだ。
産後すぐに母乳は出ない。
でも、哺乳瓶でミルクを与えすぎると、赤ちゃんが哺乳瓶の快適さを覚え、吸い出すのが大変なおっぱいを嫌がるようになる。これでは母乳育児は成功しない。
かといって、出ないおっぱいでは赤ちゃんが必要な水分と栄養分を賄えない。
母乳の分泌が少ない状態でこの3つのポイントすべてを成り立たせるのは大変。だから母乳育児は難しいし、非常にデリケートな問題なのね。
ママは自分の母乳が出ないことをわかった上で、それでも赤ちゃんに吸わせ続けないといけないから、精神的にも辛いものがある。
- 赤ちゃんを体重計に乗せる
- 母乳を30分くらいかけて吸わせる
- また赤ちゃんを体重計に乗せて数字の変化を見る
これで赤ちゃんが母乳をどれだけ飲んだかを把握できるんだけど、産後3-4日くらいは0が続く。0とかマイナスの数字しか見られないのは精神的にきついよ。
… 話がそれてまた本題に入れなさそうだからこの辺でやめとくね。
★☆★
- 赤ちゃんに十分な水分と栄養を与えること
- おっぱいに産後すぐから刺激を与え続けて、母乳を出させること
- 哺乳瓶でミルクをあげるのは極力控えること
「産後すぐからの頻回授乳」という日本の教え方はこの3つのポイントを満たす。できるだけ赤ちゃんにたくさんおっぱいを吸わせて母乳の分泌を促すとともに、1回の授乳で少量しか出ない母乳量でも、授乳回数を稼ぐことで赤ちゃんが1日に飲む総量を増やす。
で、体重を測りつつ、赤ちゃんの様子を見つつ、最低限のミルクを哺乳瓶であげるのね。これが日本のやり方。
これに対して、アメリカでは「頻回授乳しなさい」とは教えない。
出産翌日に退院し、通院で母子のケアをするアメリカでは、「頻回授乳」という方法はママが忙しすぎるので現実的ではないのだろう。加えて産後2-3ヶ月で仕事に復帰する女性に「頻回授乳しなさい」というのも無理だ。
じゃあどう教えるか。下の写真をまずは見てほしい。
親友が母乳外来でもらった資料をシェアしてくれた。この図が何を意味するかわかるだろうか?
哺乳瓶でミルクを与えすぎると、赤ちゃんはおっぱいを飲んでくれなくなる。
だから、シリンジと細いチューブを使って、おっぱいが出ているように見せかけつつ、シリンジからミルクを与えなさい、って教えるんだ。
いわゆる注射器にミルクを入れて、先の細〜いチューブをつける。
チューブの先を赤ちゃんの口に入れてあげて、赤ちゃんにおっぱいを吸わせながら、シリンジをちょっとずつ押して、赤ちゃんの口にミルクを入れてあげるんだって。
わかりやすい動画があった。
赤ちゃんはおっぱいを飲んでると錯覚しながら、実はチューブからミルクを飲んでいる、というわけ。
うまくやると赤ちゃんが自力でシリンジにつながったチューブのミルクを吸い出すこともできるみたい。
このチューブとシリンジとおっぱいの合わせ技による授乳を、3時間に1回やりなさい、と親友はアメリカの母乳外来で教わった。
この方法でやると、先の
- 赤ちゃんに十分な水分と栄養を与えること
- おっぱいに産後すぐから刺激を与え続けて、母乳を出させること
- 哺乳瓶でミルクをあげるのは極力控えること
この3条件をすべて満たすことになるわけ。
でもアメリカの母乳外来の指導はこれだけではない。もう一点、重要なことを教わる。
それが「搾乳」だ。
母乳の分泌を増やすためには、おっぱいに刺激を与え、母乳を出すことが重要だから。赤ちゃんが吸わなくても、自分で絞って刺激することで母乳の量は増やせる。産後に仕事復帰したときも、赤ちゃんの力に頼らずに母乳の分泌を維持するために、搾乳は大事だ。
そして絞った母乳はシリンジにつめて、次の授乳のときにチューブから赤ちゃんに与える。
つまり、1回の授乳の流れとしては、こんな感じになる↓
親友からシェアしてもらったこの資料と、親友の話をもとに日本語でまとめると、
①母乳を吸わせる
最低3時間に1回、1日8回以上。赤ちゃんの様子を見ながら回数は増やしてもいい。赤ちゃんが授乳中に寝てしまわないように起こしながら、左右合わせて15−20分くらいの時間をかけて。
②3時間おきにミルクを与える
先に紹介した方法で、チューブとシリンジを使ってあげる。赤ちゃんに哺乳瓶を使うことなく、母乳で足りない栄養を補うことができる。
③搾乳する
授乳が終わったら必ず搾乳すること。10−15分くらい時間をかけて。これも最低でも3時間に1回は行うこと。もっとやってもいい。搾乳した母乳は次の授乳のときにシリンジで赤ちゃんにあげる。母乳は常温で6時間置いておいていいよ。
という感じ。
日本と違うのは、原則として哺乳瓶を使わずに赤ちゃんに栄養をおぎなってること。そして搾乳だ。
搾乳が母親の権利として広く認知されている国
搾乳自体はまあ、日本のママも普通にやっていることではあるのだけど。
日本で「搾乳」というと、たとえば小さく生まれた新生児で、ママのおっぱいを吸う力が弱い時にやったりする。
母親の母乳分泌がそもそも多くないと、なかなか搾乳しても母乳はとれないし、頻回授乳で全部赤ちゃんに吸われるので、私みたいにカツカツの母乳の頻回授乳で育児していると搾乳の必要性は感じない。
だからなんというか、私の勝手な偏見かもしれないけど、「搾乳=赤ちゃんがうまく飲めないとき、過剰な母乳を搾り出すもの」みたいなイメージがなんとなくある。
対してアメリカにおける搾乳は、「頻回授乳のかわりに、おっぱいに刺激を与えるために、すべてのママが日常的にやるもの」みたいなイメージなんだ。
たとえば、
- 搾乳機が保険適用で購入できる
- 「ママの部屋(Mother's Room)」と名付けられた搾乳専用の部屋が会社にある
- 業務時間内に搾乳の時間を確保することは、ママ社員に与えられた当然の権利だと、(男性の)社員も認識している
みたいな話を親友から聞いた。
「搾乳」の日常生活への浸透度(っていうのかな?)が日本とぜんぜん違うのが伝わるだろうか。
もうちょっと続きは書くけど、今日のところはこれくらいにしてとりあえずまとめ。
アメリカの母乳外来は、
- シリンジとチューブを使った(哺乳瓶を使わない)授乳方法
- 搾乳
が指導の柱。
哺乳瓶を使わないで赤ちゃんにミルクをあげると同時に、徹底した搾乳によりおっぱいを刺激し、母乳分泌を促すことで、
- 赤ちゃんに十分な水分と栄養を与えること
- おっぱいに産後すぐから刺激を与え続けて、母乳を出させること
- 哺乳瓶でミルクをあげるのは極力控えること
この3つの重要ポイントを満たしているんだなぁ。
っていうのが、親友の話から私が解釈したことね。
この動画のようなことを24時間体制で、3時間おきにやるのがアメリカ流。
動画は短いけど、実際の授乳と搾乳など一連の流れは1時間くらいはかかりそう。
準備10分→授乳20分→搾乳20分→片付け10分みたいな感じで。
これはこれでめっちゃ大変だ。これもうちょっと詳しくまた書くね。
おわり。
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